勢いよく発せられた声が、開け放たれた玄関から家の中へと響いていく。が、しかし、返事がない。
「あれー? 誰もいないのー?」
居間を覗いてみても誰もいないので、ひとまず荷物を置きにうららの部屋へ。
「うーん……ちょっと埃っぽい?」
部屋の中で大きく息を吸い込むと、鼻腔をくすぐられ、こらえきれずにくしゃみを一つ。
「うう、窓開けて行ったらよかったのに」
そう言いながら部屋の窓を全開に。すると、外にうららのお母さんを発見。
「おーい! ただいま帰ったよー!」
窓から上半身を乗り出し、両手を大きく振ってお母さんに呼びかける。
「ん? あ、ああ。あんたね。って、いつの間に帰ってきたのよ?」
「さっきだよ。何してるの?」
お母さんは、「あんた、あんなことがあったっていうのに……」とため息を一つ。
おや? いつもなら文句の一つや二つくらい言われると思うんだけど。
「まあいいわ。それより、畑が荒らされたのよ。楽しみにしてたトウモロコシが綺麗に食べられちゃってて」
と、悔しそうなお母さん。
よく見ると、庭の小さな畑スペースに植えられたトウモロコシはきれさっぱり身がなくなっている。そして、芯の部分だけがむなしく置き散らされていた。
「食べられたの? 誰に?」
「きっと動物よ。この辺みんなやられてるんだって」
「ふーん。それは大変だねぇ」
口ではそう言いながらも、心の中ではなんだか面白いことになりそうな予感がしていた。よく分からないけど、ワクワクしてきたぞ。
「ちょっと散歩に行ってくるー!」
あたしはそう言って、返事も待たずに部屋を飛び出し玄関を飛び出していった。
周辺を見渡しながら歩いていると、確かにどこの畑も何者かに荒らされた痕がある。トウモロコシはもちろん、スイカなんて綺麗に中身だけくりぬかれている。
「ほえー。器用なもんだねー」
なんて呑気に関心していると、近くの茂みで何やら物音が。
「おや? 何だろう?」
気づかれないように、そうっと茂みへ近づいていく。ゆっくりと両手を伸ばしていき、「えいっ」と茂みの中にその手を突っ込んだ。
すると、もふもふした感触と共に、奇妙で甲高い声が響いた。
「うわっ!」
驚きのあまり、あたしは手を離し尻もちをついてしまった。当然、茂みの中にいた生き物は猛ダッシュで逃げ去ってしまう。
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