うららはこのまま旅を続けられるでしょ?″
「私になるって、変装でもするつもり?」
小馬鹿にしたつもりで言ってみると、彼女は
〝もちろん!″
と、元気よく返事をするのであった。
「あぁ、うん。そうね」
ダメだ。この子を頼った私が馬鹿だった。
〝む、なんだいその反応は″
と、フラッチーは不満そうな顔をする。
バカが過ぎている。非常識にも程がある。
そもそも、ごくわずかな人にしか視認できないというのに、どうやって私の代わりを務めようというのか。
とまあ、言ってやりたいことは色々あるけれど、なんだろう……言うだけ無駄な気がする。
そんなことより、なんとか他の方法を考えなければ。でも、あの感じだともう嘘は通じないだろうしなぁ。
「あぁぁぁどうしよう〜」
〝だからあたしがうららになってさ″
「はいはい。それはもう分かったから」
しつこいフラッチーを適当にあしらいつつ、お母さんに打ち勝つため頭を捻らせる。
〝やれやれ。そうやって考え込むからいけないのに″
「ん? 何か言った?」
フラッチーの声が聞こえて振り返った私は、我が目を疑った。
鏡も何もないはずなのに、同じ姿形でそこに立っている。私が。
一体、どういうこと? 目を擦っても頬をつねっても、ドヤ顔で仁王立ちする私が消えることはなかった。どころか、質感のある声でこう言うのだ。
「どうよ!」
「……え……え?」
何が起こったのか分からず戸惑う私。それでも、その態度と雰囲気から何となく察しはついた。
「まさか……フラッチー?」
「正解!」
頭が真っ白になりそう。まさか、本当に私になってしまうだなんて。あらためてでたらめな存在だなぁと感じた私である。
でも、これでフラッチーの提案が現実的となってしまった。だって、それが可能ならすごく美味しい話じゃない。
「ん? でもフラッチーって物に触れないんじゃなかった? ご飯も食べられないんじゃないの?」
私の質問に対し、フラッチーは「ほい」と私の手を掴んでがぶり。
「……え?」
手のぬくもり、柔らかさ、あと、口の中であろう感覚が、私の手から伝わってくる。視覚以外でも、その存在が実感できる。
不意を突かれてしばらく思考が停止してしまったけれど、フラッチーの行動で私の疑問や心配は無くなった
これは、いける!
art by Chii & Ema
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