お婆さんが砂浜を去り、私とカホラちゃんの二人が取り残されたまま、波の音を聞いていた。
しばらくして、どちらともなく海にやっていた視線が陸に戻ってきた時、
「えっと、どうしましょう?」
しばらくして、どちらともなく海にやっていた視線が陸に戻ってきた時、
「えっと、どうしましょう?」
カホラちゃんが控えめに尋ねてくる。
このまま踊りの練習の続きをするか...
ううん、今はできないよね。
このまま踊りの練習の続きをするか...
ううん、今はできないよね。
「ちょっと、整理がしたいかな」
「ですよね。じゃあ、練習は中断しましょうか」
「うん」
その後、私はしばらく浜辺を歩き続けた。
分かったのは『いのちのしま』は、クジラが運んで来てくれたメッセージ...だということだけ。だけど、それがどういうメッセージなのか、まだまだよく分からない。これじゃあ余計にもやもやしてしまう。
分かったのは『いのちのしま』は、クジラが運んで来てくれたメッセージ...だということだけ。だけど、それがどういうメッセージなのか、まだまだよく分からない。これじゃあ余計にもやもやしてしまう。
〝そんなに悩むことかなぁ〟
「うわぁ! ってなんだフラッチーか」
急に声が聞こえたからびっくりしちゃったよ。恥ずかしいなぁもう。
〝なんだとはなんだ! 苦戦してそうだったから手助けに来てあげたのに〟
「手助け?」
〝「いのちのしま」に想いをめぐらせてたんでしょ?〟
「まぁ、そうだけど」
ん? イルカって...
確か、クジラの仲間だよね?
と、いうことは。
〝言ったでしょ、手助けって。教えはしないからね〟
う、この子また人の心を。
「じゃあ、ヘルプミー」
両手を合わせてお願いすると、彼女はご満悦といった顔になる。
〝思い出してごらんよ。カホラちゃんの唄を聴いたときを〟
それはさっきのことかな。あの、夢を見てたような感覚。そういえばあの時、色んなものが見えたような……。
「それが、何か関係してるの?」
〝関係しているもなにも、うららの記憶そのものじゃないか〟
え? あれが、私の記憶? どういうこと?
〝正確には、フララの記憶だけどね〟
その瞬間、私は理解した。
そうだ。私はクジラだったんだ。
正確には、何か不思議な夢を見た時や、カホラちゃんが「いのちのしま」を歌ってくれた時や、海を前にふとした瞬間、私は人間ではなく、何か別の生き物...そう、まるでクジラのような感覚が、身体中にあるんだ。
そして夢を見ているとき、私はクジラの姿になってることが多かった。さっきもそう。音を頼りに海を泳いでるとき、確かに私はクジラだった。あまりにも自然とそうなっていたから、気にならなかったんだ。
それもそのはず。だって私は本当にクジラだったんだから。
フララ。夢の中で名前を呼ばれたときはフララだった。
それに、フラッチーが私のことをフララっていうときもあった。これは私がクジラのときに呼ばれていた名前なんだ。
なぜ?
一体なぜ、そんな記憶が蘇ってきたの?
なぜ、こんなことを、思い出さなければならないの?
他の人々も、今の自分ではなかった頃の記憶を、みんな持っているの?
謎だらけ。
この夏休みは、まったく。
おかしな謎だらけだ。
けれど、心はワクワクする。
私は、学校のことやお家のこと、宿題も友達も...もう、普通にこのまま女子学生の夏休みを過ごせなくなってもいいから、この謎の秘密を知りたくなった。
海で出会ったおじさんも。
フラッチーの正体も。
クジラの夢も、お婆さんの言葉の意味も、
すべて。
私は、それがわかるまで.....
家には帰らないことに決めた。
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